MILEを構築する際のトップダウンとボトムアップのデザインの概念を探求する3部構成のミニシリーズを、Genvidチームがお届けします。
この最初の記事では、基本的なことに焦点を当て、様々なゲームやインタラクティブな体験におけるトップダウンとボトムアップのデザインを観察し、ベースライン(基準値)を設定します。
第2回目は、これらのコンセプトをインタラクティブ配信とMILEの内容を紹介しながら具体的に説明します。今回は、フレームワーク、技術基盤、両者の組み合わせについてご紹介します。
最後に、インタラクティブ配信 と MILEのデザインのための実践的なフレームワークを、練習もしくは参考文献として利用できる、ステップバイステップの例を通して紹介します。
そもそも、なぜこのような概念に注目するのでしょうか。
新しい技術空間は複雑で、イノベーションは実行することはおろか、アイデアを出すことも困難です。 そのため、イノベーションを起こすには、スタートするまでのプロセスが重要です。そして、方向性を持つことが大きな助けとなります。
そこで問題になるのが、「何からはじめればいいのか」ということです。
トップダウンとボトムアップのアプローチは、本質的に問題を相反する視点から観てゆきます。大きなビジョンから始めてそれを構成要素に分解するのか、それともこの新しい革新的なスペースで作業できる個々の要素を見て、そこからまとまった経験を作り出すのか?
まず、トップダウンのデザインを見てみましょう。
トップダウンデザイン(トップダウンビューポイントとは別のものです)とは、ビジョンや大きな一般的側面を、より小さな構成要素とその詳細に分解するプロセスのことです。 インタラクティブなストリーミング体験では、これはベースとなるデバイスから始まり、なぜその作品が存在するのかという根拠を理由付けすることです。 例えば、ビデオゲーム版のテニスや「不思議の国のアリス」の世界を舞台にしたアドベンチャーを作る場合、核となる前提があることで、より小さな構成要素が存在し、設定をサポートすることになるのです。
ここでは、3つの事例を取り上げ、トップダウンデザインの観点からどのようなアプローチが可能であったかを考えてみましょう。ゲームの名作、インタラクティブなストリームとしてのインターフェース、そしてGenvidが提供する作品の一つです。
『シムシティ』、『Twitch Plays Pokemon』、『The Walking Dead: Last Mile』がそれらに相当します。
『シムシティ』(1989年)の核心は、オープンエンドの都市建設ビデオゲームです。メカニズムは、その原理から生まれたものです。 開発する住宅地があるのは、それがきちんとした仕組みだからではなく、住宅開発によってビジョンができあがるからです。 実際の都市の雰囲気を創り出すために、緊張感が必要であり、資金や犯罪などの要素に加え、発電所や汚染など、これらはすべてそのスタート地点のビジョンに貢献するために実装されるのです。
『Twitch Plays Pokemon』の世界的な現象は、古典的な『ポケットモンスター 赤』だけのイベントという、とても明確な制約からスタートしました。 当時は、8つの選択肢に制限されたチャットによる入力がその手段でした。 参加者が増えるにつれ、個人の入力が重要になり、参加者が一人で決められるのではなく、共同で意思決定を行う必要性が出てきました(民主主義VSアナーキー)。
すべてのサブコンポーネントは、初代『ポケットモンスター赤』をコミュニティとして完成させるというコアメッセージによって設定されており、すべてのメカニズムはこのゴールを達成するためのものです。
『The Walking Dead: Last Mile 』は、特定のブランドに焦点を当て、その伝承に関連した歴史を持つなど、様々な点で明確に区別されています。 このような環境でMILEを作成する場合、パラメータは固定されています。 これらは、サバイバル、ホラー、選択、ゾンビなどのサブコンポーネントへと連鎖し、全体のビジョンをサポートします。 ストーリーはファンによって動かされるため、彼らの共同選択を可能にするシステムも構築する必要があります。 段階を追って、ファンが期待するある種の側面が、より自然に形作られていきます。 『The Walking Dead: Last Mile』では世界観と物語が最優先され、メカニズムがそれをサポートするという形です。
トップダウンデザインは、強力なフレームワークとして、一見無敵のような強みをもっています。 それは、コミュニケーションや説明がしやすいデザインであることです。 しかし、楽しさやそれを発見するプロセスは、一枚岩ではありません。
ボトムアップデザインは、設計上の問題を別の角度から見ます。多くの場合、きちんとしたプロトタイプのメカニズムやシステムがあり、それを操作するのは気持ちの良いことです。 枠にはめることなく、テスターが何度も何度も同じプロトタイプを楽しむことで、それを基に開発する価値があることを理解します。 これは、しばしば新しいテクノロジーによってもたらされます。当然のことながら、インタラクティブ配信には、開発者が新しいシステムを試すためのボトムアップデザインが多く存在します。
ボトムアップのデザインを考えるために、2つの例を見てみましょう。『テトリス』と『プロジェクトモナーク』です。
Pentominoesからヒントを得たテトリスは、その仕組みによって進化を遂げました。
- 当初は、設定されたスペースにピースを埋めていく(パズルのように完成させる)ことが目的でしたが、これは一度しか機能せず、テスターはその後リプレイすることに興味を示しませんでした。
- 次の進化は、上からピースが落ちてきて盛り上がるというもので、リプレイ性はあるが、列がそろったものとそうでないものに差がないのは物足りないという結果がでました。
- 最後に、完成した列が消える機能が追加されると、このゲームはやみつきになりました。
1つの側面から始まった各ステップは、テストされ、新たな微調整が繰り返され、最終的な製品が完成されました。
『プロジェクトモナーク』は、スマート・エッジ・テクノロジーを提供するインテル、Genvid MILE SDKといったテクノロジープロバイダー、そしてマンハッタンの中心部にある素晴らしい不動産へのアクセスといった、多くの個別要素を含んでいました。
問題は、それをどうするかです。そこで、ボトムアップデザインの出番です。 現実世界の来場者と低遅延のインタラクティブなストリームが混在しているため、まとまった体験に向かって構築するために、別々のピースが作成されます。 『プロジェクトモナーク』を一言で説明するのは難しいのですが、それは体験とその可能性に直接的に焦点を当て、近くにいる来場者に楽しんでもらうためです。
このプロジェクトの一部始終は、こちら(Project Monarch – Genvid Technologies)でご覧いただけます。
この記事をお読みいただき、何か新しい発見があれば幸いですが、すでにこれらの点について知識をお持ちである方もいらっしゃると思います。 次回は、インタラクティブ配信の体験/MILEについての内容で、トップダウンとボトムアップをどのように組み合わせるか、物語のフレームワークと新しいテクノロジーを融合して、魅力的で新しいデザインを生み出すことができるかを見ていきたいと思います。
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